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目的をもって備える―モルモンの宣教師訓練センターでの生活

 

7月のある木曜日の午後,メキシコでの出来事。ビトル・マヌエル・ギハーロ・トーレスとその妻は,末日聖徒イエス・キリスト教会のメキシコ宣教師訓練センター(MTC)の前で息子を車から降ろしました。様々な感情が込み上げてきました。これから2年間息子に会うことはできませんが,MTCは息子に入ってほしい場所でした。イエス・キリストについて人々に教え,助けを必要とする人たちを助けるための準備をする場所です。「わたしたちは,息子が将来伝道に出て,〔キリストのみもとに人々を招くという〕目的を果たせるようにと願いながら育ててきました」とビトルは言います。

毎週,世界中で何百もの家族がこのような別れの場面を繰り返しています。息子や娘がモルモンの宣教師として18か月から24か月間の旅に出るのです。世界規模のこの一団に属する宣教師の数は,現在,史上最多の7万5,000人を記録しています。イエス・キリストについて教え,助けを必要とする人を助けることに専心するその生活様式は非常に厳しいため,宣教師は全員まず教会の15のMTCのどこかに入所します。そこで,教会の405の伝道部のいずれかに出発するまでの間,2週間から9週間(外国語を学ばない宣教師のMTC滞在は2週間まで)の訓練を受けます。

ユタ州プロボのMTCは,一度に収容できる宣教師の人数が最も多い(5,000人以上)MTCです。最も新しく,最もキャンパスが広いのは,90エーカー(36万平方メートル)の敷地に建つメキシコ・シティーのMTCで, 1,000人以上の宣教師を収容できます。そのほかのMTCは,アルゼンチン,ブラジル,チリ,コロンビア,ドミニカ共和国,英国,ガーナ,グアテマラ,ニュージーランド,ペルー,フィリピン,スペインなど世界各地に点在しています。(それぞれのMTCの写真を見る。)

MTCに入所する宣教師の多くは,「すぐに平安を感じ,目的意識を抱きます」と,ブラジルMTCの会長のラルフ・デン会長は言います。「多くの時間をかけてイエス・キリストの教義と聖文への理解を深める」からです。

イエス・キリストの教えを伝える備えをする

MTCの場所や言語は異なりますが,それぞれの施設で教えられているカリキュラムは,聖書をはじめ聖文に記されているイエス・キリストの福音です。「わたしたちは,イエス・キリストを信じる信仰という基本に忠実であろうと努めています」と言うのは,メキシコMTCの会長カール・プラットの妻カレン・プラットです。「わたしたちの教えはすべて,〔宣教師が〕ここに着いた瞬間に悟る目的に基づいたものであるよう努めています。」宣教師の学習経験は,MTCの穏やかな雰囲気により促進される,とプラット会長は付け加えます。「ここは,平和で穏やかな小さな孤島です。宣教師は容易に福音に集中し,ここで感じるべきことを感じることができます。」

モルモンの宣教師は通常,何年もの間家庭や教会で教えられてきた宗教的知識という土台のある状態でMTCにやって来ます。多くのモルモンの家族は,聖書をはじめとする聖典を毎日一緒に学びます。青少年の多くは,教会が提供する高校や大学の宗教コースにも毎週出席します。加えて,毎週日曜日に3時間続けてモルモンの礼拝行事に参加します。

しかし注目すべきは,MTCは福音の基礎に根ざした,明らかにより厳しいカリキュラムを提供するという点です。

MTCでの生活で得られる糧とは,教える練習を日々行い,以前宣教師だった教師から福音について集中的に授業を受け,教会指導者やMTC職員からディボーショナルの説教を毎週聴き,毎週奉仕することです。ドミニカ共和国やフィリピン,ペルー,スペインなど,米国外のMTCの一部では,宣教師はMTCの訓練を修了した宣教師とともにMTCの外で奉仕活動や伝道活動を行う機会もあります。

MTCでの福音の学習と教える練習は,宣教師が「効果的に教え,証し,伝道活動の喜びを経験する」ために欠かせない,とアルゼンチンMTCの会長であるケネス・リン・オープンショー会長は言います。

外国語を学ぶ

プロボMTCでは56の言語を教えています。そのうち31言語は,訓練に9週間を要します(31言語中26言語はアジア圏または東欧圏の言語)。14の米国外のMTCでは合計7言語を教えています。(米国外のMTCでは,第2言語を学ばない宣教師のために17の母語による訓練も提供しています。)言語を教える教師は,その言語を母語とするか,または自身の伝道の経験により流暢であるかのいずれかです。

言語を習得するうえで宣教師が直面する課題について,トーマス・S・モンソン大管長はこのように述べました。「この若人たちはなじみの薄い言葉に取り組み,難しい言語を学んでいます。彼らの完全な集中力と献身には,……驚かされます。」

宣教師は自分が割り当てられた外国語に触れる機会がそれまでにほとんど,もしくはまったくないことがよくあります。それでも,彼らはおおむね言語を習得するのが速い,と外部の人々は言います。ユタ州兵言語部隊の指揮官であるデレク・トールマン中佐は,『ソルトレーク・トリビューン』紙(#The Salt Lake Tribune#)に次のように語りました。MTCは「短期間で基礎を教えることにたけています。生徒は大変意欲的で,驚くべき速度で習得します。」

プロボおよびメキシコのMTCでスペイン語を教えるジェナ・デューイは,言語習得の成功の鍵は,目的を重視したカリキュラムだと言います。

「ただクラスでスペイン語を学ぶのではなく,ある目的のために学んでいるのだということを〔宣教師が〕理解できるよう助けています。〔この方法で教えることにより,彼らにとって〕言語習得がどれほど大切か分かるよう助けるのはすばらしいことです。」

教師は言語を教えるだけでなく,文化についても訓練を行い,宣教師が割り当てられた外国にスムーズになじめるよう助けます。「教会であれ国家であれ,その大使は,務めを果たす国と国民を愛するようにならなければならないと思います」とプラット会長は言います。

自活できるようになる

イエス・キリストの福音を伝える準備と外国語の学習に加え,MTCの宣教師は自活する方法を学びます。入所する18歳と19歳の男女の多くにとって,MTCは初めて自宅から離れて生活する場です。

宣教師は(しばしば家族や友人の助けを得ながら)自分の伝道資金を調達します。費用は宣教師一人当たり約1万ドルから1万2,000ドルです。彼らはまた,自分で洗濯し,毎日運動し,MTCの食堂が提供する栄養豊かな食事を取り,週に1度電子メールを通して家族や友人と連絡を取ります。

イエス・キリストが新約聖書で定められた規範に従って,モルモンの専任宣教師は二人ずつ出て行きます(マルコ6:7参照)。毎日,一日中,割り当てられた同僚と行動を共にします(MTCを離れた後は,数か月に1度同僚が変わります)。

「二人は寝食を共にします」とプラット姉妹は言います。「そして,すぐに互いを愛するようになります。」これらの若い男女は,同僚関係を通して「大陸を超え,何年も続く友情を育むのです」とコロンビアMTC会長であるロバート・ダイアーは言います。

準備するために入り,奉仕するために出て行く

結局,MTCで福音や言語,生活について厳しい訓練を受けるという経験は,「伝道地に赴く若い男女を,奉仕するためにあらゆる面でさらに備えさせる」ためにあります。

この訓練を受ける宣教師も同意します。

「MTCに入ると,周りはみんな長老と姉妹宣教師ばかりです」と言うのは,最近メキシコMTCで訓練を受けた,シャセル・イサエ・ルイス長老です。「彼らの顔つきは,見る人たちに『おお!』と思わせるものです。宣教師が放つ印象は普通の人とはまったく異なります。すばらしい印象なのです。」

書式ガイドの注釈:末日聖徒イエス・キリスト教会に関する記事で,教会の名称を最初に引用する際には,正式名称を使うようお願いいたします。教会の名称の引用に関する詳しい情報は,こちらへ: 書式ガイド書式ガイド.