注解

すべての真理を大切にする

真理についての幅広いビジョンを持つことで、人生をより深くかつ明確に理解し、愛を持って過ごせるようになる

          

「真理(truth)とは何か。」

死を前にしたイエスにピラトが尋ねたこの質問は、今の世にも意味のあるものである。真理が何であるか、またその答えをどこで見つけるべきかについてはさまざまな意見があるであろう。しかし、その答えを見つける努力を怠ることは、わたしたちにはできないのである。

しかし今日、真理を見つけるのは難しいようである。わたしたちが生きるこの時代を「ポスト真実(post-truth)」の時代と呼ぶ人も多い。オックスフォード辞典は、この「ポスト真実」という言葉を2016年の「ワード・オブ・ザ・イヤー」に選び、「一般大衆の意見形成において、客観的な事実が、感情や個人的信条に訴える力ほど人に影響を与えない」状況であると定義した。終わりのないループにはまったミーム、意見、そして中傷はソーシャルメディアを通して広まり、人に不信感を抱かせ、フィクションと事実を見分けるのにより一層の努力を要することになった。人々は自分が持つ偏見を確認するための答えを探し、イデオロギーを戦わせる人々は、真実よりも勝つことを求めるようになった。

このような混乱があるものの、わたしたちは物事の真理を無視するように操られてはいない。「全ての人間は生来、知への欲求があるものだ」と述べたアリストテレスは正しかった。しかし、真理がなければ、知るべきものは何もなくなる。わたしたちは永久に推理し続けなければならなくなる。堅固な基礎となる真理が必要なのである。

勿論、わたしたちの住むこの世界は多様な人間であふれている。真実の主張はいろいろな意見を生むが、激しくぶつかる必要はないのである。末日聖徒イエス・キリスト教会の創始者であるジョセフ・スミスは「もしわたしが、誰かが間違っていると思うなら、その人を制圧すべきであろうか?いや、わたしは彼を高めよう。そして、もし彼にわたしの方法が彼の方法よりも良いものであることを説得できないなら、わたしは自分が信じていることがらを彼にも信じるようにと求めることはしない」と、より良い方法で対処することを望んだ。

モルモンの真理の見方はイエス・キリストの人生と教えに基づいたものであるが、真理はモルモンが経験できることに限られてはいない。D・トッド・クリストファーソン長老は「真理は世界中のあちこちに散らばっている」と述べた。そして「この世の良いものをすべて得るように」、そして「真理がどこから来たとしても、それを受け入れなさい」と励ましたのはジョセフ・スミスであった。真理には多くの側面がある。それは霊的、身体的、哲学的、歴史的な側面であり、終わりの日にはそれらすべてが1つの偉大な真理となるのである。

          

教会の大管長会の一員であったヒュー・B・ブラウン管長は1969年に、教会には多くの重要なそして独自の真理があるが、「想像もできないほどの大きな真理の一部分を、わたしたちはまだ見ていない。わたしたちに明らかにされた真理は、わたしたちがまだほんの少ししか知識を得ていないことを思い知らせるものである。自分たちは何でも知っているというような間違った考えを持って傲慢になるべきではない。物事のすべてを知っているわけではなく、真理のほんの一握りを知っているだけなのであるから」と語った。

実際、モルモンの聖典には、神は「多くの偉大で重要なことを啓示される」とある。

モルモンの真理へのアプローチは、福音に関する変わることのない真理に信頼を寄せ、まだ知らないことがたくさんあることを認めるものである。モルモンの中央幹部であったB・H・ロバーツ(1857~1933)は、この教会は「人に教えを授けるため」に確立されたが、「神は教会でのみ教えを授けられるのではない。神が教えを授けられる時にも場所にも、制限はないのである」と教えた。

この教えのもとに、大管長会は1978年に以下の声明を発表した:「モハメド、孔子、宗教改革者のような偉大な宗教指導者、そしてソクラテス、プラトンなどの哲学者も、神の光の一部を受けている。国々を啓発し、個人がより高いレベルで物事を理解できるように、神は彼らに道徳的な真理を授けられたのである。」

したがって、ロバーツ管長によると「神は、人の子らすべての中に、彼らの言語そして同じ国民の中に、賢者と預言者を置いた。民が理解できる方法で彼らに話すことができるようにするためである。したがって、知識を得た純粋な人、そして神の霊と意思疎通できる人がいれば、神はその人を、民を教える教師にされる」のである。

        

真理はすべての国と民族の間に散らばっているため、モルモンは「最良の書物から」、「かつてあったこと、現在あること、すぐにも必ず起こること、国内にあること、国外にあること、戦争と諸国民の混乱、… 国々と王国に関する知識」を学ぶべきであると信じている。

真理についての幅広いビジョンを持つことで、人生をより深くかつ明確に理解し、愛を持って過ごせるようになり、もっと耳を傾け、理解する心を持ち、互いに傷つけ合うのではなく、高め合うことを望むようになれるのである。

書式ガイドの注釈:末日聖徒イエス・キリスト教会に関する記事で,教会の名称を最初に引用する際には,正式名称を使うようお願いいたします。教会の名称の引用に関する詳しい情報は,こちらへ: 書式ガイド書式ガイド.