ニュースリリース

呉市におけるヘルピングハンズ、4か月にわたる組織的な活動を終了

7月の西日本豪雨災害によって甚大な被害を受けた広島県呉市において、被災当初から続けられていたヘルピングハンズ活動による組織的な復興支援活動が終了した。

呉市内に立地する、末日聖徒イエス・キリスト教会広島ステーク呉支部は、教会福祉部の職員による働きかけもあり、被災後まもなく呉市より支援拠点(くれ災害ボランティアセンター特別サテライト)の指定を受け、土曜日と祝日を利用しての復興支援活動を続けてきた。11月10日に終了したこの活動は、悪天候による中断をはさみながら4か月に渡って続けられ、参加者は広島ステークの教会員及び専任宣教師を中心に延べ566名にのぼった。

 

活動内容は、主に泥流の流れ込んだ家屋の泥出しと清掃である。土曜日と祝日の朝9時半から15時まで、床下がむき出しになった家屋の中で、ひたすらシャベルをふるい、泥をかき出した。

毎回呉支部にて昼食の準備を行ったのは、教会員の女性たちや子どもたちを中心とした後方支援部隊である。後方支援部隊は泥まみれで戻ってくるヘルピングハンズたちを笑顔で迎え、午後の活動に備えて、汚れた長靴やベストのメンテナンスも行った。

ヘルピングハンズの黄色いベストを着た会員たちによる懸命な復興支援活動は、呉市の多くの人々の心を動かし、教会の知名度を高める一助となった。

9月23日に呉支部の教会で行われた特別聖餐会には、この活動を通じて、会員との絆を深めた人々が足を運んだ。通常の出席者は18名ほどの呉支部の聖餐会に、この日は40名もの出席があった。

そこには,教会に最近加わった男性の幼なじみの女性の姿があった。この女性は、暑い中熱心に泥出し作業を続ける会員たちの姿に感銘を受け、近所の有志を募って炊き出しを行った。

また、呉市議会議員であり、呉市ボランティアセンターの責任者を務める男性はこの日、息子を伴って訪れ、会員たちの惜しみない働きに感謝し、ケーキの差し入れをした。

被災前から教会の英会話に通っていた人の息子は、土曜日のボランティア活動に宣教師と一緒に参加した。ヘルピングハンズのベストを着て、汗だくになりながら、家屋に流れ込んだ土砂を笑顔を絶やさず黙々と取り除ける宣教師たちの姿に、少年は強い印象を受ける。作業後に少年は「僕はどうしたらこの教会に入れるのか」「どうしたら宣教師のようになれるのか」と宣教師に質問し、キリスト教を学ぶことに一層の熱意を見せていたという。

ボランティア活動に携わった会員たちにも、心の変化があった。後方支援部隊として教会に控え、毎回おにぎりやカレーをふるまった坪中奈美さんは、ボランティアに参加することで心に喜びを感じた。「ボランティアを続ける中で、身体は疲れることはあったんですけど、心は決して疲れませんでした。いつも奉仕の輪の中にいられる喜びを感じたんですね。それは、たくさんの方々が、私達のために祈ってくださった、その証明なんじゃないかって思っています。」

また、広島市からボランティア活動に参加した教会員の少年は、一日の泥出し作業を終えた後、父親に「今日は半日しかボランティアできなかったし、不謹慎かもしれないけれど心が楽しいんだ。ボランティアに楽しいという感覚を持つのはよくないことなんだろうか」と、自身の心が感じた奉仕の喜びについて問いかけたという。

全16回に及ぶ支援活動を通して4,300リットルの水と段ボール約30箱分の食料を配布、12軒の家屋と3か所の被災地の泥出し、清掃作業を行った。支援物資及び活動の恩恵を受けた人々は100名以上にのぼる。

呉支部の支部会長会第一顧問であり、復興支援活動の統括責任者を務めた坪中一成(つぼなか・かずしげ)さんは、活動を計画し、調整を進める中で、神の助けを感じた、と話す。

ある日の土曜日の14時頃、指定された場所での作業を終えての帰途で、家族が3人くらいで家の砂出しをしているのに行き会った。2、3人の教会員が何気なく近寄り、手伝いを始めたところ、深刻な事実が判明する。その家族は、今まさに砂出しをしている途中の泥まみれの家で今日も暮らさなければならないという。あわててその場にいる全員がその家の砂出しにとりかかったが、思うように進まない。

そのとき居合わせた、教会の指導者(アジア北地域会長会第二顧問)を務める和田貴志さんはこのように提案した。

「明日の日曜日の聖餐会は皆さん作業着で来てください。……目の前に助けが必要な方がいらっしゃるのだから、聖餐をとったらすぐにボランティアをしましょう。」

礼拝行事ももちろん大切だが、もしイエス・キリストがその場におられたら、目の前の困っているひとを見過ごしにされることはないだろう。和田さんの決断に感銘を受けた坪中さんだったが、暑い中一日中作業をした会員たちの体調だけが気がかりだった。どうにかして今日中に終わらせられないかと考えた坪中さんは、近隣で作業していた会員を全員集め、50人で砂出し作業に取りかかる。全員の熱心な働きにより、その日のうちに砂出しは無事終わった。体調を崩す会員もいなかった。

「私たちが悩んで決断した時は主が折り合いをつけてくださると学びました。ですが、同時に、大切なことがたくさんある中で、何を優先するのかということは、私達が常に考え続けなければならない、とも思いましたね」と坪中さんは述懐する。

また、呉支部の支部会長である大國満則(おおくに・みつのり)さんは、活動を振り返ってこのように述べる。

「この活動がきっかけとなって、教会から遠ざかっていた兄弟姉妹※1が、再び足を運んでくれるようになりました。また、暑い中の奉仕でしたが、現場にはいつも一致と主の御霊※2がありました。

今回の災害は、西日本地域に大きな被害をもたらし、亡くなった方も多くいらっしゃいます。辛く、胸の痛む経験です。それでも、この災害を通して、私達は大きな奉仕の機会を頂きました。それは失われたものが多い中でも、忘れてはいけない主の祝福※3だと感じています。また、県外の兄弟姉妹が私たちを気にかけ、メールを下さったり、支援に来てくださったりしました。広島を気にかけてくださった皆さんの愛と思いやりに感謝します。また、ご家族を亡くされたご遺族の悲しみが取り去られるように主に祈っています。」

組織的な活動は終了したが、これからも市の社会福祉協議会と連携しながら、必要に応じて呉支部を主体としたヘルピングハンズ活動を続けていく。呉市のすべての人々が平穏な日常と穏やかな景観を取り戻せるまで、イエス・キリストがしたように隣人に仕え、奉仕することが会員たちの共通した願いである。

※1─教会では,すべての人が神の子供であるとの教えから,男性を兄弟(Brother),女性を姉妹(Sister)と呼称する。

※2─主の御霊(Spirit of the Lord)とは,イエス・キリストの精神や影響力を感じること。

※3─祝福(Blessings)とは,恩恵を受けること。

書式ガイドの注釈:末日聖徒イエス・キリスト教会に関する記事で,教会の名称を最初に引用する際には,正式名称を使うようお願いいたします。教会の名称の引用に関する詳しい情報は,こちらへ: 書式ガイド書式ガイド.